ゼロから分かる個人間送金|フィンテックと銀行、決済アプリの変化

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荒井薫
執筆者:荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。
ビジネス IT

最近では、決済アプリを使って、割勘や会費徴収などを、個人間送金サービスを使って行うことが出来るようになっています。
皆さんは、お友達との割勘などをする時に、そのような決済・送金アプリを使ってやっていますか?

割勘にはとても便利な個人間送金機能ですが、実際にはそれほど広く浸透していないのが実態のようです。
今回は、Fintechによって個人間送金のツールがどのように変わってきているかについてご説明していきます。

1.送金とは?|個人間送金の変化

送金とは、お金を直接相手に手渡しをするのではなく、銀行振込み、郵便局から送る現金書留、小切手を送金する等などの第三者を介した手段でお金を送ることを意味します。
決済と送金の違いは、そのお金の移動が必ずしも売買取引などを伴うものではないというところになります。
「個人間送金」とは、企業ではない個人の間で、手渡し以外の何らかの手段でお金を送ることを指します。

日本においては、従来は銀行と郵便局でのみ許されていた送金業務が、資金決済法によって、100万円以下の送金については資金移動事業者の登録をすれば一般の事業者でも事業が可能となりました。
そして、後で説明をしますが、送金した資金を現金として引出すことをしないのであれば、資金決済法の前払式支払手段の事業者の登録をすることで、個人間送金が可能です。
これらにより、私たちの生活での個人間送金は変化し始めました。

1-1.Fintech以前の個人間送金について

日本では2015年頃からのFintechブームで、資金決済法の後押しもあり、資金決済法を法的根拠とする個人間送金ができるサービスが増えています。
では、それ以前の使い勝手はどうだったのか海外と比較しながら検証します。

日本

先に説明をした通り、日本においては個人間送金については、銀行振込、現金書留、郵便為替等選択肢が複数ありましたし、今でもあります。
特に郵便局での送金は誰でも使えるということで、個人間送金については手数料が若干高めであること、即時送金可能時間が短いことを除けば、日本ではFintech以前でも意外と便利であったと言えると思います。

アメリカ

例えばアメリカでは、Fintech以前の個人間送金は小切手を使うのが主流でした。日本でいうところの銀行振込みに近いACH(Automated Clearing House)という仕組みがありますが、即時送金ではなく、時間がかかります。また、Wireと呼ばれる銀行振込みは手数料が高く、使い勝手が悪いものでした。

イギリス

イギリスでは、2008年に民間銀行主導でFaster Paymentというサービスが始まりました。利用できる送金額に上限があり個人向けですが、24時間365日利用可能という事で、利便性が高く一気に普及しました。同様の仕組みがシンガポールや豪州でも展開されているとのことです。

中国・東南アジア

中国は従来から銀行機能が遅れていて、個人間送金だけでなく全体的な金融サービスが十分に提供されていませんでした。
東南アジアの発展途上国でも、金融インフラ自体が整っていない状態が続いていました。

1-2.Fintechブーム初期の個人間送金について

Fintechブームが始まってからの個人間送金サービスは、先ほどのFintech以前の状況に応じて、国ごとに特徴を持って発展・進化していきました。

アメリカ

アメリカでは、先ほどのACHやWireの使い勝手の悪さから、早い段階から即時の個人間送金サービスが模索されていました。
その中でも2009年に創業されたVenmoは、2013年にPayPalの傘下に入ると一気に普及して、若者を中心に個人間送金のデファクトスタンダードとして浸透しました。
今やアメリカでは、「Please venmo me.」は「お金送ってね!」という意味で使われています。

中国・東南アジア

中国においては、先ほど述べたとおり元々銀行機能も遅れていて、金融サービスのレベルが低かった中で、AlipayとWe chat Payが一気に広まり、中国の事業者による金融サービスのデファクトスタンダードになりました。結果として、この巨大企業2社は、中国における個人間送金も含む総合金融サービスのレベルを一気に引き上げました。

東南アジアやアフリカの発展途上国においては、スマートフォンの普及により、携帯番号で送金をするサービスが一気に広まりました。
新たな金融インフラを整備することなく活用できるためです。

日本

日本では、先にご説明したとおり、資金決済法により個人間送金サービスは規制されており、金融機関以外の事業者による個人間送金は1回100万円以下いう制限があります。
個人間送金は、当初海外送金を主たる目的とした事業者が多かったのですが、次第に、アメリカのVenmoを模したサービスが登場することになります。

2.Fintechで進化を続ける各国の個人間送金

Fintechが進化するにつれて、個人間送金サービスも進化をしています。
個人間送金については決済以上に国によって特徴があります。詳細は後でご説明しますが、送金に関しては法規制に拠る比較的厳しい制約が存在することが大きな要因です。

2-1.アメリカの個人間送金

アメリカではVemnoによって一気に個人間送金サービスが全米に浸透しました。

そして、Venmoに対抗するために、アメリカの銀行業界はZelleと呼ばれる新しい個人間送金サービスを2017年から始めています。
特徴としては、全米のメジャーな銀行も含めて多くの銀行が参加しているという事です。そのため、Zelleは即時送金手段として一気に広まりました。
この辺りは、銀行によって複数の送金サービスが乱立している日本とは状況は異なります。

2-2.ヨーロッパの個人間送金

欧州においても、アメリカと同様に銀行が主導権を取って新しい個人間送金サービスが生まれています。

日本で一番有名なのは、スウェーデンのSwishだと思いますが、欧州ではチャレンジャーバンクと呼ばれる店舗を持たないでモバイルだけで展開する銀行が次々に生まれていることもあり、一般事業者よりも銀行による新しいサービスが出てくるところが特徴です。

2-3.中国の個人間送金

中国においては、先に述べたように、完全な民間銀行というのが存在しない状況の中で、ある程度政府の意向を汲んだAlipay、We chat Payが国のデファクトスタンダードとなりました。
この2つのサービスは、それぞれ完成度が高いですが、共産主義国である中国というインフラに即してサービスを展開しているため、グローバル展開はハードルが高い状況であるとも言えます。

2-4.日本の個人間送金

日本における個人間送金サービスは、Fintech初期時代に、初期Kyash、Paymo、初期のLINE Payが登場しています。

このうち、請求書方式を採用していたPaymoは、2017年1月にサービスを開始しましたが2年強でサービス終了となりました。

また、初期Kyashは、アメリカのVenmoを連想させる送金サービスとしてスタートして、近くにいる人であればBluetoothを使ってアクセスして送金が出来る等の利便性を謳っていましたが、次第に決済サービスを主体とした事業モデルに進化させています。

LINE Payも、当初は銀行口座を通じて現金を引き出せるサービスを利用するための本人確認手続き(KYC)が、免許証などを使う比較的面倒な方法でしたが、現在は本人確認手続きは銀行口座をLINE Payに紐づけることで利便性が上がりました。
その上、LINE Pay自体に多くの追加機能を充実させているため、今は個人間送金はone of themのサービスとなり、一定のユーザーを獲得しています。

更に、Pring、みずほ銀行が主導するJ-Coin Pay、住信SBI銀行が主導するMoney Tap、そして伸長度では一番のPayPayなど新しいサービスが広がっています。
日本における個人間送金サービスは、決済手段と同様にサービスが乱立気味であるのが特徴です。

3.個人間送金を規制するもの

個人間送金は、売買取引を前提としないものもあります。例えば、仕送りや借入金の返済など様々な用途に使われます

しかし、無秩序に個人間送金を認めてしまうと、犯罪者やテロリストに容易に資金が流れてしまうリスクがあるので、世界的に年々送金に関する規制は厳しくなっています。比較的高額な送金を取り扱う銀行ではその手続きはかなり厳しくなっていますが、最近では個人間送金を主に取り扱う送金事業者に対しても規制が厳しくなっています。

3-1.マネーロンダリング対策

送金、特に個人間送金は特定の取引に裏付けられたものでないものも多くあります。その中には、明らかにマネーロンダリング(資金洗浄)目的のものが存在します。

つまり、資金の入手元に違法性があるものを、送金をすることでその資金の素性を消してしまうというものです。そして、そのような資金の多くは、テロリストや、日本であれば暴力団関係者などに流れていると言われています。
そのため、世界的にマネーロンダリング対策は法規制が厳しくなっています。

3-2.本人確認(KYC)

マネーロンダリング対策を万全にするためには、本人確認(KYC)を厳しくする必要があります。日本は従前よりKYCが甘いと言われてきました。容易に銀行口座を作ることができて、ATMでの取引金額の上限も他国に比べてかなり高額です。
特に個人間送金に関して、日本の事業者は、送金者に関するKYCはきちんとやっても、送金先のKYCがおろそかになりがちなところがあります。

3-3.送金金額の規制

とはいうものの、Fintechに支えられて便利になった個人間送金の利用をむやみに規制することは日本を含めて諸外国でもやっていません。
個人間送金として合理的だと思われる送金金額と頻度であれば、アカウント登録時にきちんとKYCをすることでスムーズに使えるようにしています。

つまり、マネーロンダリングの恐れがある高額な送金についてのみ、銀行も決済事業者も取扱いに厳しい制約をかけるようになりました。

3-4.最近の日本の規制について

日本においては、2019年秋に、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)第4次対日相互審査が実施されます。

銀行のみならず、カード会社や一部資金移動事業者に対しても事前の確認が行われているようです。
この影響を受けて、今年に入って、外国人が日本で銀行口座を開設することが急に難しくなったと言われています。これには、日本で銀行口座を作った外国人が日本を離れる時に銀行口座を売買する事件が起こっているという背景もあります。

4.まとめ

個人間送金に関してFintech以前の日本は、コストは別にして、利便性については比較的進んでいる便利な国であったと言えます。
しかし、便利で銀行口座も簡単に開設出来る環境であったことから、マネーロンダリングの疑われる個人間送金が日本を通じて行われたことも多くありました

資金決済法が出来た時も、資金移動事業者については本人確認手続き(KYC)について規制が敷かれました。
とはいえ、当初は当局の監視も緩く、日本はマネロンがしやすい国というレッテルを国際的に貼られてしまい、最近になって急激に規制が厳しくなってきています。

一方で、Fintechによる技術の進歩や競争により、個人間送金サービスには多数の事業者が進出していますが、最終的に現金化(預金口座への送金も含む)ができるのは、KYCを適切に行う資金移動事業者だけが可能であるという制約があります。
また、資金決済法では資金移動事業者の1回当たりの送金額の上限は100万円と決められています。
しかしながら、資金移動事業者が、自らの判断で個人間送金の金額の上限を独自に決めており、その限度額もしばしば変更がありますので、このあたりを予め調べてから利用することをお勧めします。

参考に、最近よく使われるPay系のサービス等の対応状況を表にまとめてあります(2019年10月15日現在)。
サービスによって条件の変動がありますので、詳細は公式サイトをご確認ください。

  前払支払手段事業者 資金移動事業者 備考
ATMアクセス不可
現金引出しはできない
ATMアクセス可能
現金引出し可能
LINE Pay   ◯(送金には相手もLINE Payのアカウントが必要) LINE Payアカウントに銀行口座を紐付けることで本人確認手続きができ、個人間送金が可能になる。
PayPay   ◯(相手がPayPayアカウントがなくても送金が可能な場合がある) チャージ残高からのみ可能。上限額は24時間で10万円以内。
Kyash ◯(本人確認済か否かで送金限度額が異なる)   チャージ残高からのみ可能。上限額は24時間で10万円以内。
楽天ペイ   ◯(楽天キャッシュのみ、一定時期にチャージされたもののみ) 1回10万円以下、1ヶ月あたり100万円以下。
pring   ◯(本人確認手続きをしたアカウントのみ) 1回100万円以下、銀行口座へ送金して引出し可能。

現在では、金融当局も、日本国内の少額個人間送金と、海外への比較的高額な送金を扱う事業者とで規制を分けようという方向で検討がされています。
積極的に個人間送金サービスを利用する場合には、この辺りの金融庁の規制の動向に注視しておく必要があることに留意してください。

荒井薫
執筆者:荒井薫
労働省→公認会計士→コンサルタント→事業会社CFO&国際ブランド付きプリペイドカード事業の立ち上げをやりました。子供の頃から物書きになりたかったため、書く感性を磨きながら、皆さんに様々な情報をお伝えしていければと思っています。

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