新卒社員は就職前のアルバイト収入も年末調整が必要

年末調整とは、1月から12月までの所得から各種控除などを調整し、最終的な所得税額を再精算する手続きです。
ただし、会社が把握している所得は、会社から受け取った給料だけです。
就職して初めての年末調整をする場合、就職前の1月から3月の間に稼いでいたアルバイトの給料は年末調整によって申告する必要があるのでしょうか?
新入社員の年末調整について詳しく解説していきます。
目次
1.就職前のバイト代も年末調整が必要
所得税は1月から12月までのすべての所得に対して課税されるものです。
そのため、原則的には就職前のバイト代も年末調整によって会社に申告しなければなりません。
年末調整とは
年末調整とは、その年の1月から12月の納税額を精算するものです。
就職が4月からであるなら、1月から3月の所得について会社は把握していません。
また、バイト代が少額の場合には課税されていない可能性も高いので、就職前のバイト代も年末調整によって会社に申告することが必要になります。
年末調整をすることによって、バイトしていた時に納税しすぎた部分の税金が返ってくることもあります。
どれくらい返ってくる?それとも追加される?
年末調整で、どれくらい返ってくる(還付される)か、または、追加で納税が必要となるのか、気になるでしょう。
どうなるかは、アルバイト代がいくらであったか、就職後に社会保険料などがどのくらい控除されたかによって異なります。
アルバイト代が小額か、または、アルバイト先で源泉徴収されていたときは、還付される可能性が高いです。
一方、アルバイト代が高額か、または、アルバイト先で源泉徴収されていなかったときは、追加納税となる可能性が高いです。
具体例-アルバイト代が源泉徴収されていなかった場合
多くの会社は新入社員の年収を4月から12月分として算定しています。
この場合には年末調整によって1月から3月までのバイト代分だけ年収が増えてしまうことになるので、追加で税金を納めなければなりません。
たとえば、1月から3月にアルバイトで月10万円ずつ合計30万円稼いでいた学生が、4月から就職し就職後の月収が20万円の場合、25万円の場合に、いくらの税金の支払不足が発生するのか見ていきましょう。
(控除については、社会保険料のみを想定しています。通勤手当はゼロとします。)
就職後 の月収 |
①就職後の 年収 |
②源泉徴収 された所得税 |
③実際の年収 (本来払うべき 所得税) |
④年末調整で 追加納税が 必要な税金 |
---|---|---|---|---|
20万円 | 180万円 | 33,930円 | 210万円 (34,900円) |
970円 |
25万円 | 225万円 | 48,060円 | 255万円 (48,700円) |
640円 |
年末調整をすることによって、アルバイト時代の給料が年収に加算されてしまいます。
この場合には、1000円未満ですが、わずかな所得税の支払不足が生じています。アルバイト代を申告せずに年末調整してしまうと、この税金が漏れてしまいますので、注意しましょう。
アルバイト時の源泉徴収票
前述したように、アルバイト時代の源泉徴収票も年末調整によって会社に提出する場合があります。
「収入が20万円以下であれば申告しなければよい」と考えている人も多いようですが、「20万円以下で申告しなくて良い」というのは、確定申告の話で、しかも、給与所得以外の所得が20万円以下の場合のみです。
新入社員の場合にはバイト先と就職先の2箇所から給料を受け取っているため申告を行う義務があります。
しかし、会社からバイト時代の源泉徴収票の提出を要求される場合と要求されない場合があるようです。
会社に提出する場合と、会社に出さない場合の対処法について説明していきます。
会社に出す場合
税法では、年末調整を強制していませんが、会社の義務として行っています。
会社によっては「新入社員のバイト収入の扱いに関しては社員の判断に任せている」という方針のところも存在します。
このような会社に勤務している人は、まずは人事部などの担当部署に確認してみましょう。
一方、会社から「提出してください」と言われた場合には、会社の指示通りにバイト時代の源泉徴収票を年末調整時に提出する必要があります。
会社に出さない場合
新入社員の中には「源泉徴収票を提出することが会社に迷惑をかける」とか「学生時代のバイト先を知られるのが恥ずかしい」と思う人もいるでしょう。
また、会社が「バイト代に関しては自分で確定申告をするように」という理由でバイト時代の源泉徴収票を受け取らないという方針の会社も存在するかもしれません。
どのような理由でも、年末調整時に会社へバイト時代の源泉徴収票を提出しない場合には、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告は毎年3月15日までに前年の所得を申告し所得税を支払うものですので、バイト時代の所得も確定申告で申告することができます。
なお、確定申告を行う場合には、アルバイトの源泉徴収票と現在の会社の源泉徴収票が必要になります。
2.源泉徴収票が見つからない場合
「年末調整でバイト時代の源泉徴収票が必要」と言われても、バイト時代の源泉徴収票は使わないと思い込んで捨ててしまったり、無くしてしまっている人も多いのではないでしょうか?
年末調整時や確定申告時に源泉徴収票がない場合にはどのように対処したらよいのでしょう?
源泉徴収票は必要なのか
源泉徴収票は現在の勤務先に就職する前の所得や税金を計算した書類ですので、年末調整や確定申告で就職前のバイト代を申告する際には必要な書類になります。
源泉徴収票がない場合には収入があったのに、その収入がいくらなのかを証明する書類がないことになってしまうので、バイト時代の所得を申告することができません。
源泉徴収票がないからと言って、年末調整や確定申告を行わない場合、もし本当は追加徴収されるべきであったら、脱税になってしまうので、源泉徴収票はバイト先からもらったら無くさないように保管しておく必要があります。
再発行してもらうには
源泉徴収票は年末調整や確定申告時に必ず必要になるとは言っても、源泉徴収票がどうしても見つからない場合や、捨ててしまった記憶がある場合にはどのように対処すればよいでしょうか?
どうしても源泉徴収票が見つからない場合には、もう一度バイト先に発行してもらうしかありません。
「前のバイト先とはあまり良い関係ではないからバイト先には再発送してもらえるか分からない」と不安に感じている人も多いはずです。
しかし、所得税法第226条では、労働者が会社に源泉徴収票を請求したときには再発行する義務が定められています。
このため、バイト先には遠慮なく「源泉徴収票を再発行してください」と申し出ましょう。
再発行してもらえない時の対策
源泉徴収票の再交付は法律によって事業者に対して定められた義務です。
しかし「バイト先の担当者が所得税法第226条を知らない」「再交付義務があるのを分かっていながら意地悪して再交付に応じない」「忙しくて再交付を忘れている」というような理由によって再交付されないことは珍しいことではありません。
どうしても再交付に応じてくれない場合には、税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出するという方法があります。
税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出すると、税務署から「源泉徴収票を発行するように」という書類をバイト先に送ってくれるため、ほとんどの企業は税務署から指導があると再交付に応じます。
なお、税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を出しても再交付をしてくれない場合には、バイト時代の給与明細から確定申告をすることもできます。
まとめ
新入社員が初めての年末調整をする時には、基本的にその年の1月から3月までのバイト代を年末調整によって会社に申告する必要があります。
また、会社が源泉徴収票を受け付けてくれない場合には、確定申告でバイト時代の所得を申告しなければなりません。
バイト代であっても、所得があるにも関わらず年末調整や確定申告によって税務申告をしなければ脱税になってしまうので注意しましょう。
年末調整は会社によって異なりますが、11月前後から行われることが多いようです。
新入社員が初めての年末調整を行う時は、早めに勤務先に対して「バイト時代の源泉徴収票の提出はどうするのか」と確認し、もしも手元にバイト時代の源泉徴収票がない場合にはバイト先に再発行を依頼するようにしましょう。