役員退職金の計算方法と確定申告

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会議

 ある法人の社長や役員などが退職する際は、その貢献などを考慮し、役員退職金(役員退職慰労金)が支給されます。しかし、役員退職金と聞いても、あまり馴染みがないだけに、その詳細を知っている人は少ないと思います。そこで、その額はどのように決めるのか、どういう経緯で支払われるのか、税金はどうするのかなど、今回は役員退職金について詳しく説明していきます。

1.役員退職金とは?

1-1.役員退職金とは何か

役員退職金とは、その名の通り、役員が退職したときに支給される退職金のことです。
法人税法第2条第15号では、役員を「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人ならびにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう」と定義しています。

役員に退職金を支払うかどうかは、法律では定められていません。そのため、支給の有無やその金額などは、その会社の裁量に任されています。

1-2.普通の退職金との違い

では、役員の退職金と従業員に対する普通の退職金ではどのような違いがあるのでしょうか。就業規則や慰労金規定などで、退職金の支給について規定を設けているのは、役員の退職金も従業員に対する普通の退職金も同じです。

しかし、役員の退職金は原則、株主総会や取締役会などの決議がなければ支給されません。また、内規で、一定の役員退職慰労金支給基準を確立しておく必要などもあります。役員退職金については、法人の損金計上についても厳しくなっており、高額すぎると損金にできません。役員の退職金と従業員に対する普通の退職金の主な違いは次のとおりです。

  役員退職金 従業員の退職金
支給対象者  役員  従業員
支給の有無  就業規則や慰労金規定等で定める  就業規則や慰労金規定等で定める
 金額  定款・株主総会決議により定める  就業規則や慰労金規定等で定める
 株主総会決議や
取締役会の決議
 必要  不要
 損金算入  不当に高額の場合は不可  原則、全額算入
 損金算入時期 株主総会での決議が行われた日
または役員退職金を支払った日
 従業員の退職日または退職金が支払われた日、
就業規則に記載されている退職金の支払日

2.役員退職金の支給の流れ

2-1.役員退職金の計算方法

役員退職金を支給するには、まず役員退職金の金額を計算する必要があります。しかし、員退職金は、他の会社等に比べ、不当に高額の場合は損金に算入できません。そこで、明確な基準をもとに支給金額を計算する必要があります。

役員退職金の計算方法には、平均功績倍率法最高功績倍率法1年あたり支給額法3種類があります。この中で、一般的に使われている方法が平均功績倍率法です。
平均功績倍率法とは、役員として在任していた間の功績に応じて退職金の金額を決める方法のことです。具体的には次の計算式で計算します。

役員退職金の金額=退職時の役員報酬月額×役員在任年数×平均功績倍率

平均功績倍率については、法律で決められているわけではありません。一般的には、次の倍率であれば問題ないと考えられています。

  • 社長 3.0
  • 専務・常務 2.0~2.5
  • 取締役・監査役 1.5~2.0

ただし、あくまで目安であり、絶対ではありません。本来は会社ごとで平均功績倍率は異なるはずですので、平均功績倍率を決める際には、なぜ、この倍率なのかという明確な理由付けが必要となるでしょう。では、具体例で金額の求め方を見てみましょう。

例)退職時の役員報酬月額 50万円 役員在任年数30年 平均功績倍率3.0の場合
役員退職金の金額は次のようになります。

役員退職金の金額=退職時の役員報酬月額50万円×役員在任年数30年×平均功績倍率3.0=4,500万円

2-2.役員退職金の支給までの流れ

では、役員退職金の支給までの流れについて見ていきましょう。役員退職金の支給は、定款で支給金額や算出方法が決められている場合を除き、株主総会での決議が必要です。通常は、株主総会を開く場合が多いです。通常の流れとしては、次のとおりです。

  1. 事前に慰労金規定を作成
  2. 株主総会で役員退職金についての決議
  3. 取締役会で支給金額や方法などの決定
  4. 役員退職金の支給

株主総会決議では、役員退職金を支給する時期や金額、支払い方法を取締役会に一任する(支給に対する慰労金規定がある場合)ものと、支給総額は株主総会で決め、個人ごとの役員退職金を支給する時期や金額、支払い方法を取締役会に一任するものがあります。

株主総会と取締役会で役員退職金の支給について決議されたら、その決議通りに役員退職金が支給されます。

3.役員退職金と税金

3-1.役員退職金の確定申告

役員退職金は、その受け取り方に応じて大きく次の3種類に分けられます。

  • ①退職一時金制度
    退職の際に一括して一時金として受け取る制度です。
  • ②退職年金制度
    退職金を一時金ではなく、一定期間または生涯にわたって年金として受け取る制度です。
  • ③一時金・年金併用制度
    退職一時金と退職年金の制度を併用する制度です。

実は、退職一時金制度と退職年金制度は、所得税の取り扱いが異なります。退職一時金制度は退職所得に、退職年金制度は公的年金等に係る雑所得に該当し、控除額や税額が異なります。

ただし、退職一時金制度の場合も退職年金制度の場合も、原則、支給される役員退職金から所得税が天引きされ支給されるので、そこで課税については完了します。そのため、通常は確定申告の必要はありません。

注意が必要なのは、退職一時金制度のもとで、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出せず、一律20.42%の所得税(復興特別所得税を含む)が天引きされている場合や、退職年金制度のもとで、他の所得がある場合や医療費控除による所得税の還付を受ける場合です。これらのケースでは、確定申告を行う必要があります。

3-2.役員退職金の損金

役員退職金は、もちろん会社にとっては負担となるため、損金に計上できます。ただし、一般の従業員の退職金と異なり、特に中小企業では、経営者の意向などがより反映されやすくなってしまいます。役員退職金を無制限に損金として認めてしまうと、利益操作につながりかねません。そこで、不当に高額の場合は損金不算入としています。

では、どの程度の金額が認められているのでしょうか。一般的には、上で述べた平均功績倍率を用いて計算していれば認められる傾向にあります。しかし実際の税務調査では同地域・同業種・同規模の役員退職金を目安に否認を判定するため、注意が必要です。

3-3.役員退職金を損金に計上した場合の影響

役員退職金を損金に計上した場合には、その法人にとってどのような影響があるのでしょうか。役員退職金を損金に計上するということは、その分、法人の利益が減少することを意味します。役員、特に代表取締役が退職する場合は、会社を後継者に引き継ぐ場合などの理由が多いでしょう。
役員退職金を損金に計上し、法人の利益が減少することは、会社の株式の評価額を下げることに繋がります。そのため、事業承継における贈与税や相続税を下げることができます。

しかし、役員退職金支払いのための資金がなかったり、利益が減少しすぎて、赤字になることも起こりうるでしょう。この場合に有効なのが生命保険の保険金の活用です。保険金を受け取ることで、役員退職金支払いのための資金を得ることができます。退職時には解約返戻金、死亡退職時には死亡保険金を退職金の資金として利用します。また、受け取った保険金は益金に算入する必要があるため、役員退職金の損金を相殺することができ、その分法人の利益の減少を少なくすることが可能です。

このように、役員退職金を支払う場合は、会社の利益や資金繰りにも注意を払う必要があります。

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4.申告時の注意点

では、役員退職金を申告する場合の注意点を見ていきましょう。

4-1.役員退職金を受け取る場合の注意点

株主総会の決議をうけていない役員退職金は返金を求められる

役員退職金の支給には、株主総会の決議が必要です。もし株主総会の決議をうけずに、役員退職金を受け取った場合は、せっかく受け取っても会社に返金しなければならないことがあるので、注意が必要です。

税金に気を付ける

役員退職金では、退職一時金と退職年金で税金の制度が異なります。退職一時金の場合は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、本来よりも多くの所得税が天引きされ、確定申告が必要になります。
また、複数の会社に勤め、退職年金を複数もらっている場合も、確定申告が必要な場合があるので注意しましょう。

退職年金の場合は、会社の倒産に注意

役員退職金を退職年金でもらう場合に注意しなければならないのが、会社がその後倒産した場合です。会社が退職金共済などに加入していれば、退職金は保護されます。また、国の立替払い制度などもあります。しかし、最悪の場合、退職年金の支給が止まる場合もあるので、会社が退職金共済に加入しているのかなどを事前に確認しておいたほうが良いでしょう。

4-2.役員退職金を支給する場合の注意点

株主総会議事録や取締役会議事録を作成しておく

役員退職金は他の経費に比べて、損金に計上するためには厳しいチェックが必要です。税務調査でも必ず調査されます。税務調査で損金を否認されないためにも、株主総会議事録や取締役会議事録を作成し証拠として残しておきましょう。

所得税や住民税の計算方法を知っておく

役員退職金を支給する場合は、退職一時金の場合も退職年金の場合も所得税や住民税を源泉徴収する必要があります。ただし、それぞれで税金の計算方法が異なります。そのため、所得税や住民税の計算方法を知っておく必要があります。

退職月の役員報酬月額を上げるのはNG

功績倍率法では、退職時の役員報酬月額を役員退職金の支給額の計算に使います。しかし、退職金の金額を増やすために、退職月の役員報酬月額を上げることは認められません。役員退職金の損金算入を認めてもらうためにも、退職する年度の報酬は変動させないようにしましょう。

まとめ

今回は、役員退職金について説明しました。しかし、その特殊性から、実務的な部分まで深く理解することは、難しいことだと思います。いざ役員退職金について考える際には、専門の税理士に相談することをおすすめします。

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