サラリーマンなら知っておきたい所得税と年末調整の仕組み

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給与 給料 明細

 毎月支払われている自分の給与がどのように計算されているか、年末調整が何のためにあるか、ご存知でしょうか?
会社が勝手にやってくれますので、知らなくても給与受け取りに影響はないですが、給料や所得税の計算の仕組みについて知っていて損はありません。というより、サラリーマンであれば常識として知っておくべきでしょう。

そこで、所得税の仕組みや、毎月の給料の計算方法、年末調整について、計算例も交えながら、わかりやすく解説します。

1.所得税や社会保険等の徴収制度

日本の所得税は、納税者自ら所得金額や納税額を計算し申告・納付する「申告納税制度」と、給与等を支払う者がその支払いを行うときに所得税額を計算し、支払金額から差し引いて国に納める「源泉徴収制度」の2つの制度を併用しています。

確定申告は申告納税制度を、サラリーマンの給料は源泉徴収制度を採用しています。そのため、サラリーマンの毎月の給料からは所得税が源泉徴収されていますが、同じように住民税(特別徴収)や社会保険料、雇用保険料なども毎月の給料から徴収されています。

毎月の給料から源泉徴収されている所得税の金額は、生命保険料や地震保険料などの一部の所得控除を加味せず計算されています。また、子供が生まれたり年の途中に扶養家族の変化があったりするなどいろいろな理由で、1年間の給料に対する実際の所得税の額と、源泉徴収された所得税の額が異なります。そこで年末に調整を行い、実際の所得税の額と源泉徴収された所得税の額の差額を還付したり、追加で徴収したりします。

医療費の控除など年末調整できない部分は、翌年納税者自ら確定申告を行います。

2.毎月の給与計算の手順と方法

では、実際に毎月の給料計算の手順と方法を見ていきましょう。

①当月の給与額を確定

まず、残業代や休日出勤、欠勤などを加味して従業員各人の当月の給与額を確定します。

②社会保険料の計算

その月の給料が確定したら、所得税の源泉徴収額の計算の前に、社会保険料の計算から始めます。

サラリーマンが加入する社会保険料は、健康保険介護保険(40歳~64歳)、厚生年金保険の3つに分かれます。それぞれ会社と従業員で折半して負担します。介護保険料は、健康保険料と一緒に支払います。健康保険の運用者は、もともと国が運営していた健康保険を引き継いだ「全国健康保険協会」と、それぞれの企業等が運営する「健康保険組合」に大別されます。どちらが運用している保険に加入するかは、勤務先によって異なります。

一般的には、全国健康保険協会が運営している健康保険(協会けんぽ)に加入している会社が多いです。また、協会けんぽでは、都道府県ごとに健康保険料の額が異なります。
では、ここから具体的に計算方法を確認しましょう。

社会保険料の計算例

例)
東京都在住40歳(介護保険あり)、妻と小学生・中学生の子供2人を扶養。
月収40万円×12ヶ月+賞与60万円×2回(120万円)=年収600万円、一般の事業。
健康保険は、東京の協会けんぽに加入

平成29年12月現在、協会けんぽ(東京都)では、介護保険料ありの健康保険料率が11.56%、厚生年金保険料率が18.3%です。社会保険料は、月収の金額そのものに保険料率をかけて計算するわけではなく、報酬金額に応じて定められた報酬月額に保険料率をかけて計算します。
毎月の月収が変動なく40万円の場合の報酬月額は41万円になります。

  全額 自己負担額
健康保険料 41万円×11.56%=47,396円 47,396円×1/2=23,698円
厚生年金保険料 41万円×18.3%=75,030円 75,030円×1/2=37,515円
合計   23,698円+37,515円=61,213円

実際に給与計算を手計算で行う場合は、報酬額や保険料額が一覧で記載されている健康保険・厚生年金保険の保険料額表にあてはめて保険料の金額を求めます。

協会けんぽでは、都道府県によって保険料額表が異なります。詳しくは下記のURLをご参照ください。

【参考サイト】協会けんぽ「平成29年度保険料額表」

③雇用保険料の計算

次に雇用保険料の計算をします。雇用保険料は毎月の給料額に保険料率をかけて計算します。
雇用保険料は会社と従業員で負担しますが、負担する割合が異なります。
平成29年度の雇用保険料率は以下のとおりです。

平成29年雇用保険料率

【引用】厚生労働省:平成29年度の雇用保険料率

一般の事業の場合、計算は以下のとおりです。

雇用保険料自己負担額=40万円×3/1,000=1,200円

④所得税の源泉徴収額の計算

社会保険料と雇用保険料の計算が終わったら、いよいよ次は所得税の源泉徴収額の計算です。所得税の源泉徴収額は、社会保険料と雇用保険料を差し引いた後の給料の金額と、扶養家族の数、源泉徴収税額表を使って求めます。

★社会保険料と雇用保険料を差し引いた後の給料の金額

具体例の場合は、以下のようになります。

月収40万円-社会保険料自己負担額合計61,213円-雇用保険料自己負担額1,200円=337,587円

★扶養家族の数

平成23年以降、16歳未満の子供については扶養控除の対象から外れました。そのため、所得税の源泉徴収額を求める際も、扶養家族の数に含めません。具体例の家族では、小学生と中学生は扶養家族にならず、扶養家族は妻1人です。

★源泉徴収税額表

源泉徴収税額表は、例年前年11月ごろに税務署から各事業所へ発送されます。
月給者の場合は、源泉徴収税額表の中の「月額表」を使います。月額表には、その月の社会保険料控除後の給与等の金額と扶養家族の人数(甲欄)と税額が記載されていて、該当する税額がその月の所得税の源泉徴収額となります。

具体例の場合は、337,587円(335,000円以上338,000円未満)と扶養家族1人が交わる8,210円が、その月の所得税の源泉徴収額です。

平成29年源泉徴収税額表

【出典】国税庁:源泉徴収税額表 を一部加工

⑤住民税の計算

毎月の給料からは、住民税も源泉徴収されています(住民税の特別徴収)。

毎月の給料から差し引かれる住民税は、前年分の所得に対する住民税を12等分して、6月から翌年5月の12ヶ月間にかけて徴収します。
ただし、会社では住民税を計算しません。前年度の所得を基に各自治体が住民税を計算し、会社に納付書が届きます。(以下図は、納付書の参考例)

住民税特別徴収

3.賞与計算の手順と方法

賞与の計算の手順は給料計算の手順と同じです。賞与の支給額を確定し、社会保険料や雇用保険料を計算してから、所得税の源泉徴収額の計算をおこないます。しかし、計算方法が給与の場合と異なります。社会保険料や所得税などの計算方法を見ていきましょう。

①社会保険料の計算

賞与の場合の社会保険料も、健康保険と介護保険(40歳~64歳)、厚生年金保険に分かれます。また、それぞれ会社と従業員で折半して負担します。

給与の場合は、決められた報酬月額に保険料率をかけて計算しましたが、賞与の場合は、標準賞与額に保険料率をかけて計算します。標準賞与額とは、賞与の金額の1,000円未満を切り捨てた金額です。
保険料率は、毎月の給料の場合と同じです。具体例の場合は以下のとおりです。

  全額 自己負担額
健康保険料 60万円×11.56%=69,360円 69,360円×1/2=34,680円
厚生年金保険料 60万円×18.3%=109,800円 109,800円×1/2=54,900円
合計   34,680円+54,900円=89,580円

②雇用保険料の計算

雇用保険料の計算は、給料の場合と計算方法も保険料率も同じです。賞与額に保険料率をかけて計算します。一般の事業の場合の計算例は以下のとおりです。

雇用保険料自己負担額=60万円×3/1,000=1,800円

③所得税の源泉徴収額の計算

賞与に対する所得税の金額は、以下の計算式で求めます。

賞与の源泉徴収税額=賞与から社会保険料を差し引いた金額×税率(算出率)

★賞与から社会保険料を差し引いた金額

具体例の賞与から社会保険料を差し引いた金額は以下の通りです。

賞与60万円-社会保険料自己負担額合計89,580円-雇用保険料自己負担額1,800円=508,620円

★税率(算出率)

賞与の源泉徴収税額を求めるための税率(算出率)は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算します。そのためには、前月の社会保険料控除後の給与等の金額と、扶養親族等の数が必要となります。
前月の社会保険料控除後の給与等の金額は、給与の計算で求めた337,587円、扶養家族は妻1人です。これを表にあてはめると6.126%になります。

平成29年源泉徴収税額表(賞与)

【出典】国税庁:賞与源泉徴収税額表 を一部加工

具体例の場合は、

賞与の源泉徴収税額=賞与から社会保険料を差し引いた金額508,620円×税率(算出率)6.126%=31,158円

4.12月の年末調整

12月になると、1年間の給料に対する確定した所得税額と、毎月の給料や賞与から源泉徴収されている所得税額との差額を精算する年末調整を行います。
手順を見ていきましょう。

1)必要書類を会社に提出

年末調整を行う際には、必要事項を記載した書類を会社に提出する必要があります。
具体的には以下の書類です。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
配偶者控除や扶養控除等を計算するために必要な書類です。配偶者や扶養家族の内訳を記載して提出します。通常次年度分を提出します。

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・給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書
生命保険料控除などの保険料控除や、配偶者特別控除を計算するために必要な書類です。
保険料の明細や控除額、配偶者の所得額や配偶者特別控除額などを記載して提出します。

※「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」ともに、配偶者控除等の改正により、平成30年分より様式が異なります。「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」は、平成30年から「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者特別控除申告書」の2つに分かれる予定です。

・各種控除の証明書
生命保険料の控除証明書(ハガキ)や住宅借入金等特別控除申告書など、受ける控除や加入する保険会社ごとに証明書等を提出します。

2)年間の本来の所得税額の計算

では、上記の具体例で生命保険料、住宅ローンなどの控除はないと仮定し、年間の本来の所得税額の計算手順と具体例を見ていきましょう。

①給与所得控除後の給与等の金額を求める。

サラリーマン(給与所得者)には一般的に、自営業者のような経費は認められていません。その代わりに、給料に応じた給与所得控除という控除額があります。
そのため、年間の本来の所得税額の計算するためには、給与所得控除後の給与等の金額を求める必要があります。
給与所得控除後の給与等の金額は、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を基に計算します。

給与所得控除

【引用】国税庁:給与所得控除後の給与 を一部加工

年収600万円の場合の給与所得控除後の給与等の金額は、4,260,000円です。

②所得控除額の計算

次に、社会保険料などの保険料の控除や配偶者などに対する控除など、所得控除額の計算をします。
具体例の場合では、社会保険料控除と配偶者控除、基礎控除が該当します。

★社会保険料控除

社会保険料控除は、給料から徴収されている健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の1年間の金額がそのまま控除額になります。
具体例の場合は以下のとおりです。

社会保険料控除の額=給料分((社会保険料61,213円+雇用保険料1,200円)×12か月)+賞与分((社会保険料89,580円+雇用保険料1,800円)×2回)=931,716円

★配偶者控除、基礎控除

配偶者控除と基礎控除はそれぞれ38万円です。

★所得控除額

所得控除額の合計は、
社会保険料控除の額931,716円+配偶者控除38万円+基礎控除38万円=1,691,716円です。

③所得税の対象となる所得金額と所得税の計算

次に、給与所得控除後の給与等の金額から所得控除額を差し引いて、所得税の対象となる所得金額を求めます。
具体例では、以下の通りです。

給与所得控除後の給与等の金額4,260,000円-所得控除額1,691,716円=2,568,284円→2,568,000円(千円未満切り捨て)
所得税の金額は、上記金額を「年末調整のための算出所得税額の速算表」にあてはめて計算します。

年末調整 算出所得税額

【引用】国税庁:算出所得税額 を一部加工

今回のケースは、1,950,000円超 3,300,000円以下に当てはまるため次の計算となります。

所得税額=2,568,000円×10%-97,500円=159,300円

④過不足額の計算

1年間の給料に対する確定した所得税額と、毎月の給料や賞与から源泉徴収されている所得税額との差額を計算します。
確定した所得税額は、上記で計算した159,300円です。
毎月の給料や賞与から源泉徴収されている所得税額は、給料分(8,210円×12か月)+賞与分(31,158円×2回)=160,836円

160,836円-159,300円=1,536円となり、1,536円徴収しすぎていることがわかります。

3)過不足分の精算

年末調整の計算が終わったら、所得税の過不足分の精算を行います。通常は、その年の最後の給料で調整します。今回の場合は1,536円戻ってきます。一般的には戻ってくることのほうが多いです。

4)源泉徴収票や給与支払報告書を作成して送付

年末調整が終わったら、源泉徴収票や給与支払報告書を作成し、従業員への交付と税務署、各自治体への送付を行います。給与支払報告書を受け取った自治体は、その金額を基に住民税の金額を計算します。

5.確定申告をする場合

サラリーマンの場合は、原則年末調整で所得税の処理は終わりです。
ただし、医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除(初年度のみ)があり、所得税の還付を受ける場合は年末調整ではなく、確定申告が必要なので注意しましょう。

また、不動産経営や株式売買などで他に所得があってその合計が20万円を超える場合や、年間2,000万円を超える給与収入がある場合も確定申告が必要です。

詳しくは、税務署や税理士にご相談ください。

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